AR 溶接技能訓練システム(Soldamatic)
AR溶接技能訓練システムとは?
AR(=Augmented Reality:拡張現実*)溶接技能訓練システムとは、技能訓練シミュレータを利用して、バーチャルの環境で溶接技能訓練を行うシステムです。本システムを用いた溶接技能訓練は、実際に市販されている溶接マスクと溶接トーチを用いて行いますが、練習用の金属や溶接材料は、CG(コンピュータグラフィックス)で表現されます。そのため、消耗材の消費やヒュームを発生させることなく、何度でも繰り返し溶接訓練ができます。また、スパッタや溶融池などの溶接現象もCGで表現しているため、火傷など、怪我のリスクを軽減します。本システムは、このようなシミュレータ機能の他、技量の「見える化」を実現し、溶接の良し悪しを客観的に評価する機能を備えています。この「見える化」により、訓練生の技量に関する課題が明らかになるため、従来の訓練手法よりも早く技量を習熟することが可能です。
*AR(拡張現実)は、カメラで撮影した映像にCGなどのデジタル情報を重ねて表示する技術です。
なぜ溶接技能訓練システムが注目されているのでしょうか?
近年、少子化や指導者の高齢化により、溶接技能者不足がますます深刻になっています。また、溶接技能者育成には、溶接技能訓練で利用する材料費や準備にかかる時間など、多くの訓練コストがかかります。さらに、持続可能な社会を目指して、環境に配慮することが求められています。このような背景から、練習コストを削減しつつ、溶接技能者を効率よく育成する方法の一つとして、溶接技能訓練シミュレータを利用した溶接教育システムが注目されており、本溶接技能訓練システムは、アメリカやドイツを始めとする世界各国の職業訓練所を中心に採用されております。
特徴
AR溶接技能訓練システムには以下の特徴があります。
- 消耗材を削減
- CO2やヒュームを削減
- 怪我や火傷のリスクを軽減
- 技能の「見える化」により、訓練効果を向上
- 訓練効果の数値化により、訓練モチベーションを維持
- 訓練生の自己学習を促進
- 指導者の負担を軽減
- トータル訓練コストの削減
製品
製品名:
SOLDAMATIC(ソルダマティック)
基本構成:
- 溶接技能訓練シミュレータ本体(AR溶接マスク付属)
- 半自動溶接トーチ、被覆アーク溶接棒ホルダ、ティグ溶接トーチ
- シミュレータ用の溶接棒、溶加材
- ワークピース(T継手、重ね継手、突合せ継手、管円周継手、板と管の隅肉継手)
- 溶接技能訓練シミュレータの基本ソフトウェア
オプション構成:
- ワークスタンド(ワークピースを固定するスタンド)
- ステンレス鋼、アルミニウム(基本ソフトウェアに追加)
- 輸送用フライトケース(本体を輸送するための専用ケース)
- ティグペダル
- アドバンストピース
- カスタムピース開発
システムの詳細
ガイド機能:
ガイド機能は、溶接技能訓練シミュレータで溶接している間、リアルタイムに溶接トーチ(溶接棒)の運棒方法が正しい値*であるかどうかを色で視覚的に教示してくれる補助機能です。この機能により、訓練生は、運棒が正しい値になっているかどうかを確認しながら溶接訓練することができます。この正しい値の姿勢で反復練習することにより、正しい姿勢の型を効果的に身に着けることできるようになります。
* 正しい値とは、実際の溶接で品質が担保できる運棒方法の値を指します。運棒方法のガイドは、次の5つとなります。1)移動角(溶接方向のトーチ角度)、2)動作角(溶接方向と鉛直方向のトーチ角度)、3)溶接速度、4)溶接ワイヤの突き出し長さ(もしくは、アーク長)、5)溶接ワイヤ(溶接棒/タングステン)の狙い位置。これらの値については、お客様がお持ちのデータをそのまま反映させることができます(下記、溶接課題の作成の図をご参照ください)。
解析機能:
解析機能は、溶接技能訓練の結果を可視化、数値化するための機能です。この機能により、訓練生は、訓練直後にその結果と改善すべき点を確認することができるため、訓練効率が向上します。また、訓練結果を再生する機能を備えているため、結果を後から見て分析することもできます。これにより、指導者は、常に訓練生に付き添う必要がなくなるため、指導にかかる負荷が軽減します。
学習管理システム(LMS:Learning Management System):
学習管理システムは、溶接技能訓練シミュレータを利用して訓練する課題の作成、その訓練結果や進捗状況を管理するシステム*です。指導者は、訓練生ごとに訓練結果の進捗状況の確認、管理を行うことができます。
* 学習管理システムを利用するには、Windows/Mac PCが必要です。Windows/Mac上で動く専用ソフトウェアと溶接技能訓練シミュレータを連携させることで実現するシステムとなります。
溶接訓練システムをどう活用すればよいでしょうか?
溶接技能訓練シミュレータを用いる訓練手法はあまり馴染みがないかもしれませんが、いくつかの方法論がこれまで研究されてきました。その一つとして、実際の溶接実習を行う前に、溶接の運棒方法を反復練習し、溶接姿勢を学ぶ手法が考案されています。この手法により、従来の溶接実習時間を削減しつつ、訓練効果を向上させることができると報告されています*。
(従来の手法) 座学→溶接技能実習
(シミュレータを利用した手法) 座学→シミュレータによる技能訓練→溶接ブースでの技能実習
*参考文献:http://www.soldamatic.com/wp-content/uploads/2019/10/Infographic-Traditional-vs-Soldamatic.pdf
アドバンストピース(溶接競技用ピース等)*
SOLDAMATICは基本的な溶接継手だけではなく、溶接競技会で利用されるような練習ピース(アドバンストピース)を提供しています。溶接競技会のピースを何度も仮想空間で溶接技能訓練することができるため、ピースのコストを削減することが可能です。
*オプションとなります。
カスタムピース*
お客様のニーズに合わせて、溶接する製品の一部や訓練したい継手のピース(カスタムピース)を作成します。このサービスにより、実際の現場で行う溶接と同じ状況で、ARによる溶接技能訓練を行うことができます。そのため、製造現場での訓練に必要なピースの削減が可能となります。
【製造現場への応用】